コンプレッサーを使いこなす

コンプレッサーの基礎と6つのパラメーターについて

コンプレッサーには様々な種類があるのですが、とりあえずデジタルコンプレッサーの使い方を覚えておけばどんな音にも対応できます。後からコンプレッサーの種類については詳しく解説します。

 

今回はprotools付属のデジタルコンプで解説していきます。デジタルコンプは別途用意する必要はなく、DAWに付属として必ずついていますから、それで対応できます。

 

 

 

パラメーターで重要なのが「レシオ」「アタック」「リリース」「スレッショルド」「ゲインリダクション(GR)」「KNEE(ニー)」です。

 

レシオはどの割合で音を圧縮するかです。2:1なら圧縮対象となる部分の音量を半分にするということになります。レシオの数値が高くなればなるほど強くコンプレッサーがかかって圧縮されることになります。

 

コンプレッサーの使い方

ゲインリダクションは、リアルタイムで、どれだけの音量下げられたのかがGRメーターとして表示されます。-2dBと出てくれば、2dB分音量が下げられたということとなります。

 

スレッショルドで圧縮が開始されるライン(基準)を決めます。スレッショルド値を下げれば下げるほど深くコンプがかかります。

 

アタックタイムはスレッショルドのライン(基準)を超えてから、圧縮が開始されるまでの時間です。例えばアタックタイムを1msに設定した場合、スレッショルドを超えた地点から1ms(1,000分の1秒)後にコンプレッサーがかかるということです。

 

リリースタイムはスレッショルドのラインを下回った地点から、コンプレッサーがかからなくなるまでの時間を指します。例えば、リリースタイムを5msにした場合、スレッショルドのラインを下回ってから5ms後にコンプが完全に止まるということです。

 

レシオ、アタック、リリース、スレッショルド、この4つを駆使して、自在に音作りをしていくわけです。図にすると以下の通りです。

 

 

コンプレッサーとアタックとリリースについて

ミックスする上で瞬発的な音というのはとても扱いづらく、理由は音が尖っているとシンプルに聞き苦しい(音が耳に刺さる)からと、瞬発的に出る音(特にキックやスネアやバッキングの音)は音圧が出にくいからです。持続音のように、平坦な音の方が、音が一定の枠に収まるので、音圧は出やすいです。

 

瞬発的な音はパッと出てパッと消えるので枠の空き面積が大きくなりますし音圧を感じづらいです。ではどうするかというと、瞬発的な音の頂点(頭)をコンプレッサーで叩いて(圧縮させて)、持続音のように、平坦な部分を作るわけです。すると、頂点の尖った部分が丸くなって、大変聞きやすい音になります。

 

ただ、難しいのが、それぞれのパートで音の挙動が違います。スネアの場合は、スレッショルドを超えてから4〜10ms後に音の頂点に達するケースが多いです。ベースは1〜12ms、ギターは大体25ms〜、といった感じで、当然ですが、それぞれのパートでアタックに違いがあります。

 

音作りにおいて、すぐに出てくることもあれば、そろーと出てきて、ゆっくり頂点に達することもあります。モグラ叩きゲームのように頭を頂点で叩いていくわけですが、出てくるスピードが各パートで異なるのです。

 

アタックが早い楽器に関しては、アタックを最速にしないといいタイミングで頭を叩くことができません。逆に、アタックが遅い楽器に対しては、アタックを最速にしてしまうと、頭が来る前にコンプレッションしてしまい、音圧を出すことができません。アタックを調節して、それぞれ的確なタイミングで、頂点に達した時にコンプレッションします。

 

※ただし、全てが全て的確に頭の頂点を叩けばよいというわけでもありません。少しタイミングをずらした方が音作りとして面白味が出るケースもあります。あえてずらすということです。

 

具体的な使い方ですが、まずはアタックとリリースを最速(アタック1msからスタート)に設定しておきます。これだと、スレッショルド値を超えたらすぐにコンプレッションが開始して、スレッショルド値を下回ったらすぐにコンプが切れる状態です。最も挙動がわかりやすい状態なのです。これがスタートです。

 

レシオはとりあえず3:1くらいでよいです。スレッショルドを深めていき、ゲインリダクションが大体-3dB以内に収まるようにします(あまりに深くかけると音の特徴的な部分が削れてしまいます)。

 

そこから耳で聞きながら、アタックを遅めていき、音の頂点がピンポイントで潰れるタイミングに合わせます。ただ、漠然と頂点のタイミングに合わせるようにアタックをいじるのは難しいと思います。ある程度それぞれのパートでアタック値の目安があると楽です。目安は以下の通りです。

 

●各トラックのアタックタイム目安

ギター:25〜50ms  ボーカル:1〜20ms   ピアノ:10〜50ms   キック:15〜20ms   スネア:4〜10ms  タム:50ms前後    HOとRoom:10ms前後    ベース:1〜12ms   Busコンプ:8〜30ms

 

それができたら次はリリースです。リリースを最速にすると、音が一本調子になってしまいます。スレッショルドを超えた部分のみ不自然に圧縮されて、極端にダイナミクスのない音になってしまうのです。

 

リリースを遅くしていくと、サスティン(余興)までコンプレッションされ、粘りっ気のある自然な音になります。最速からはじめて、耳で聞きながら右につまみを回してリリースを遅くしていって、自然な音になる位置までもっていきます。リリースで音を横に横に伸ばしていくというイメージでやるとよいです。

 

楽曲のBPMによっても違うのですが、私は大体、80ms〜100msくらいはリリースを伸ばしています。

 

注意点としては、次の音が鳴るまでにはコンプが切れている(ゲインリダクションが0になっている)ことが好ましいです。リリースが残ると、次の音がきたときに、リリース分のコンプが残った状態でコンプすることになり、綺麗にかかりません(例外はいくらでもあり、フィットタイプですと、関係ないです)。要は、次の音が来るまで、という範囲で、リリースを決めていくことになります。

 

レシオについてですが、「2:1」くらいですと、柔らかい質感となります。ボーカルだったりストリングスだったりアコースティックギターだったり、質感を残したい時にそれを選びます。

 

「3:1」「4:1」くらいだとちょうどいい塩梅というのか、きつくもなく、コンプレッションできます。

 

「6:1」またはそれ以上になると、ガッチリと固めた硬い質感になります(歪み注意)。キックだったり、ベースだったり、低音楽器にはこれくらい圧縮してもよいと思います。ジャンルがロックの場合は、きつくコンプレッションさせて、躍動感を出すこともあります。バラードなどは柔らかいコンプレッションが多いと思います。

 

KNEEについてですが、これはスレッショルドの付近でカーブ(曲線)を作りスレッショルド値を曖昧にできます。KNEEが0の場合、決めたアタック値を基準にハッキリとしたかかりになります。5〜10程度軽かけておいた方がデジタルコンプの直線的な挙動を緩和してくれます。

 

パラレルコンプで音の重心を下げる

イレギュラーな使い方として、パラレルコンプをかけることで、音の重心を下げることが可能です。トラックを聞いて、なんか音が宙に浮いてるようなとか、なんか重心が高いなと感じたら、パラレルコンプをかけてみるのも面白いです(重心を高くしている素晴らしい音作りも世の中には沢山ありますし、完全なる好みとなります)。

 

キックスネアタムOHRoomボーカルピアノギターなどに使えます。たくさんかけるとくどいのでピンポイントで使うとよいです。

 

やり方ですが、コンプレッサーによってはドライとウェットの比率をつまみで調整できるものもあります。その場合はそれで対応できます。

 

ただ、AUXトラックを立ち上げて、そこにセンドリターンで原音を送って、そこでコンプをかけて、最後に原音との音量バランスをとる(パラレルコンプをかけたトラックが少量混ざることになります)というやり方がよいかと思います。

 

コンプの設定のポイントは、レシオは3:1や4:1くらいにして、とにかくスレッショルドを思いっきり下げていって、ゲインリダクション-10〜15dBくらいにすることです。思いっきり潰します。するとゴツゴツとした硬い音になります。

 

また、音の頂点の帯域が強く潰れるので、相対的に低音も出てきて迫力のある音になります。それを原音と混ぜることで、それが重石のような役割を果たし、音の重心が下がったように感じられます。

 

アタックとリリースについては、従来のコンプのやり方と同じです。音の頂点くらいにアタックを合わせます。リリースは気持ち長めの方がよいです。全体を潰したいのでサスティンまでしっかりと潰れるように、リリースは長めにしておきます。とにかく思いっきり潰してそれを原音と混ぜるということが大事でそれ以外のセオリーはないので、自由に設定を決めていくとよいです。

 

コンプレッサーの種類について

デジタルコンプとアナログコンプとがあります。

 

デジタルコンプはメーカーによって特徴が多少違うのですが、殆どで、共通したパラメーターが存在します。上記で説明したレシオ、アタック、リリース、スレッショルドです。数値を入力することで、それに従って機械的に正確にコンプレッションされます。

 

アナログコンプは種類が膨大です。パラメーターはそれぞれ独自のものが採用されています。挙動もそれぞれ種類によって異なります。
今回は汎用性の高い2つのアナログコンプを紹介します。とりあえず漠然とかけとけばいい感じの音になるのがアナログコンプです。

 

その@オプトコンプ( LA-2AやLA-3A)

Optical(光学式)コンプレッサーは、ゲインリダクションの量を抑えるために光量や光学セルが使用されています。LEDなどの発光素子を使用して、音声入力の大小を光の強弱に変換し、その光の受光素子で受けて圧縮動作を制御しています。光の変化は緩やかなため、自然な挙動でコンプレッサーがかかります。

 

オプトコンプで最も有名なのはTeletoronixLA-2Aです。これは電気光学回路と真空管アンプの2つを合わせて、柔らかい質感でのコンプレッションを実現しています。

 

DAWではオプトコンプのシミュレーションプラグインが用意されていることがあります。例えばprotoolsならBF-2AやBF-3A(上位版のみ付属)、logicならVintage Optoがそれに該当します。貴重なプラグインなので入手が難しいですが、手元にあれば重宝します。

 

今回はwavesのCLA-3Aを例に解説します。

 

CLA-3A
いじるパラメーターは左のつまみ(ゲイン)と右のつまみ(ピークリダクション)しかありません。真ん中のVUメーターがゲインリダクションですね。レシオは自動で固定されています。

 

右のつまみがスレッショルドのようなもので、ここを上げ下げすると、コンプがかかるようになります。また、左のつまみでどのくらいの音量をこのコンプに入れるのか決定します。左のつまみで音量を入れていけばスレッショルド値に達してメーターが反応しますし、左をいじらなくても、右のつまみを下げていけば、スレッショルド値が下がってメーターが反応します。

 

この2つのつまみをいじって、大体-3dB以内に収まるくらいのゲインリダクションで、コンプをかけます(全体をぴったりとコンプしたい場合は-8dBくらいでもいけますが)。

 

コンプをかける前とかけた後で音量の差がでないように調節するのもこの2つのつまみで行います。オプトコンプのよい所はとにかく柔らかい質感でコンプできることです。

 

オプトコンプは光量で制御されますから歪みとは無縁です。ボーカルやストリングスやハイハットやシンバルやアコースティックギターなど、音を極端に潰すことなく、コンプレッションができます。不利な点としては、音圧がでにくいです。硬い音にしたい時には適しません。

 

そのAFET Compressors(Urei 1176)

「電界効果トランジスタ」と呼ばれるコンポーネントを使用しており、非常に速いレスポンスでコンプレッションが可能です。瞬間的な大音量にも素早く反応してくれます。

 

殆どのDAWで1176のシミュレーションプラグインは用意されています。logicはVintage FET、protoolsはBF-76、cubaseはVintage Compressor mkUなど。

 

FET系コンプレッサー
使い方ですが、スレッショルド値は自動で一定に定められていますので、左のインプットつまみで内部に入れる音量を調節させてコンプレッションさせます。VUメーターにゲインリダクション値が出ます。

 

スレッショルド値を超えるとVUメーターが反応し出します。コンプをかける前とかけた後で音量が変わってしまうので、右のアウトプットで音量を調節して、かける前と同じ音量にします。レシオは4と書かれているのが4:1で8が8:1です。4段階あり右のスイッチで選べます。

 

注意点としては、アタックとリリースのつまみは、右に回せば(時計回り)最速となります。左に回せば遅くなります。画像では7と書いてありますが、7の地点が最速となります。デジタルコンプとはそこが逆です。

 

レシオを決めて、アタックとリリースを右に完全に回し切って、最速にさせます。そこからスタートさせて、アタックを、左に回していき、遅くしていきます。どのくらい音を遊ばせるのか、アタックを開けば開くほど音が遊ぶようになります。

 

それを調節して、次はリリースも、どれだけ余興をさせるのか調整します。これらを耳で聞きながら調節していって音作りします。反応が良く、しっかりと潰れるので、硬めにしたいボーカル(ロックなど)や、潰したいギターやピアノ、ベース、キックスネアなどに最適です。挿してみると案外何にでも合います。

 

コンプをかけないパートがあってもよい?

コンプレッサーを使わないと音圧が出てくれないので、基本は全パートにかけることになります。ただし、かけないパートを作るのもよいと思います。コンプレッサーをかけないと、かけたパートと比べて、音が薄く感じられます。あえてそういったパートを作った音作りをすることもあります。

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