ディレイの使い方

ディレイの使い方

そもそもディレイとは何かですが、ディレイはやまびこ効果を与えるエフェクトとなります。山に向かって大声を出したら声が山に当たって返ってきます。また、戻ってきた音が反射して向こう側に移動して、それがまた返ってくるという往復を繰り返し徐々に音が小さくなっていきます。

 

原音が設定された数値分遅れて何度も鳴って消えていくということです。

 

今回はディレイの使い方と各楽器ごとのおすすめのセッティングについて解説していきます。

 

ディレイの4つのパラメーターについて

ディレイの使い方
それぞれのディレイプラグインにはほぼ共通したパラメーターが存在します。その中で重要なのがディレイタイム、フィードバック、ローカットとハイカット、モジュレーションの4つです。

 

ディレイタイムは原音を鳴らしてから音が返ってくるまでの時間を表す基本的なパラメーターとなります。例えば1msは1000分の1秒になりますが、ディレイタイムを150msに設定したら、原音が発せられてから150ms後にディレイがなるということになります。どの程度原音から遅らせるのかということです。

 

フィードバックは繰り返しの回数です。前述した通り、やまびこ効果ですので、何度も往復しながら音が消えていきます。何回繰り返してからディレイが止まるのかを設定します。

 

ここで音の減衰を調節するわけです。%で示され、%を低くすれば音が返ってきてからすぐに消えていきますし、%を高くすればなかなか減衰しない音になります。

 

ローカットとハイカットですが、これはディレイでは必須となります。ディレイでは音に影をつけて演出することが目的です。中音域だけを残して、それ以外はカットすることが好ましいです(例外はありますが)。低域を残しておくと音が濁ったり、リズムがくどく感じたりします。

 

100〜150Hzをローカットしてすっきりとさせます。9kHz〜の高域も不要ならカットして構いません。プラグインによってはローカットがついていないこともあります。例えばprotoolsの付属ディレイにはついていません。その場合は、ディレイの下の段にEQをインサートして、そのEQでカットするとよいです。

 

モジュレーションとは変調のことで、音をくすぐって揺れを生じさせるものです。モジュレーションをかけることでディレイタイムを周期的に揺さぶることができ、ピッチが微妙に揺らいだ遅延音になります。これがダブリング効果に近い働きとなり、音に厚みを出すことができます。DEPTHで揺れの大きさ、RATEで揺れの速さを調節します。トリッキーな使い方ですが、音に厚みを持たせたいとか、もう少し揺らぎのあるディレイにしたいという時にかけてみると良いです。

 

プラグインによってはLとRとで別々の設定ができるケースがあります。例えばストロークギターに、Lにはディレイタイム80ms、Rにはディレイタイム85msを設定します。こうすると何がよいかというと、LとRとで別々の残響となるので、ステレオ空間を感じれるようになります。フィードバックもLとRとで少しだけ変えます。

 

ディレイをかけるのは必須?

必須ではありません。あくまで空間の演出の方法の一つでしかありません。どういった空間を作りたいか、究極的には自己満の世界だと思います。

 

バンドモノなど音数が多い場合はディレイが邪魔になることがあります。バラードや弾き語りなど音数が少ない場合は空白部分が多いので、ディレイを活用することでその空いた間を埋めることができます。

 

ディレイのかけ方

ディレイはトラックに直接インサートするやり方と、AUXトラックを立ち上げて、センドリターンで送るやり方があります。直接インサートする場合はディレイをインサートして設定をしてウェットドライつまみでどのくらいリバーブを混ぜるか決めます。

 

センドリターンをする場合

AUXトラックを立ち上げて、そこにセンドリターンで原音を送って、そのトラックでディレイプラグインをかけて、ウェット100%にして、混ぜる量をバストラックのフェーダーで調節する、というやり方。

 

センドリターンにすることで、パンを振り分けて、原音は左(L)から流して、リバーブは右(R)から流す、というやり方をとることもできます。リバーブの設定のバリエーションを増やすことが可能です。

 

使用するディレイのプラグインはDAW付属で十分です。ディレイで細かな設定をすることは殆どないので特にそれで問題ないです。

 

ディレイはベースやドラムに使われることは殆どありません。リズムが曖昧になってしまうからです。ただ、スネアやタンバリンやハンドクラップには超ショートで使われることがあります。バッキング(ギターやピアノやシンセ)、楽器のソロ、ボーカル、ストリングに使用される機会が多いですね。

 

設定方法はザックリとですが、ディレイタイムは、数値で設定するなら最短から初めて徐々に伸ばしていきます。35〜50msがショートディレイ、ボーカルなら180ms前後が最適です。300ms~になるとロングディレイとなります。耳で聞きながら最適な数値を決めます。楽器は1/4や1/8などテンポの中から決めるのが無難です。1/32や1/16はとても短く、厚みが出て隠し味のような使い方となります。1/4だとロングとなりゆったりとしたディレイになります。

 

フィードバックも最短からはじめて徐々に伸ばしていって最適な数値を耳で確認しながら決めます。短くて10〜20%程度、残像を長く残したい場合は40〜50%に設定するとよいです。ローカットは100または150以下をバッサリと、ハイカットは8k〜をバッサリといったほうがすっきりとします。

 

もしモジュレーションをかけたい場合はDEPTHとRATEをいじりながら揺れの大きさや速さを調節して、好みのピッチの揺れを作ります。

 

ディレイの定位(PAN)ですが、原則は、原音と同じ位置にします。例えばボーカルが中央だとそのボーカルのディレイも中央に置きますし、ギターがR75にある場合はそのギターのディレイもR75にします。ただ、例外もありまして、後で解説しますが、ダブリングを目的とした場合、原音をR75に置いた場合、ディレイをL75に置く、というやり方もあります。

 

ディレイの音量ですが、これは好みとなります。音量を大きい所からはじめて、フェーダーを少しずつ下げていって、このくらいの影が欲しいという箇所に決めます。

 

次の項ではトラック別(楽器別)のディレイセッティング一覧について紹介していきます。

 

ディレイセッティング7選

ギターにショートディレイをかける
ディレイタイム フィードバック ローカット ハイカット
50ms 10% 115Hz 7600Hz

 

ギターを、原音とディレイをLとRで分ける(ダブリング効果)
ディレイタイム フィードバック ローカット ハイカット
20ms 0% 130Hz 7600Hz

 

カッティングギターにかけるディレイ
ディレイタイム フィードバック ローカット ハイカット
1/8 20% 130Hz 4000Hz

 

エレピにショートディレイをかけて厚みを出す
ディレイタイム フィードバック ローカット ハイカット
50ms 5% 110Hz 11000Hz

 

ストリングスにロングディレイをかけて壮大さを演出する
ディレイタイム フィードバック ローカット ハイカット
340ms 45% 250Hz 11000Hz

 

スネアにショートディレイをかけて影を出す
ディレイタイム フィードバック ローカット ハイカット
35ms 15% 50Hz 3000Hz

 

ボーカルに合うディレイ
ディレイタイム フィードバック ローカット ハイカット
175ms 25% 100Hz 4500Hz

 

より詳しくディレイのことを知りたい方は「スグに使える ディレイ&リバーブ・レシピ」安齋 直宗 (著)をどうぞ。

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