音楽のミックスのやり方

ミックスに必要なもの、環境

ミックスに必要なものは「DAW」「オーディオインターフェイス」「ヘッドホン(スピーカー)」です。

 

DAWは例えばcubaseやlogic proやprotoolsなどで、どのソフトにも編集ウインドウとミックスウインドウが用意されており、編集ウインドウでオーディオトラックの編集や打ち込みや再生停止ができます。ミックスウインドウでミックス作業ができます。ミックスするために必要なプラグインも付いています。

 

DAWから音を鳴らしてミックスする必要がありますが、一応パソコンのスピーカーで音を鳴らしてミックスすることも可能です。Mac(apple)でしたら、音質が良いので、案外それでもいけますが、Windowsは音質が売りではありません。

 

パソコンのスピーカーの音質には限界があります。オーディオインターフェイスを使うと、AD/DAの性能が高いので、高音質でモニターすることができます。オーディオインターフェイスはあった方がミックスのクオリティは上がります。

 

ヘッドホンを使うか別途スピーカーを用意して使うかですが、これはどちらでもよいと思います。ヘッドホンでも問題なくミックスができます。

 

ミックスの前準備

ミックスは楽曲の問題を全て解決する魔法のツールではありません。あくまで、音量バランスを整えたり、コンプレッサーやリミッターで音圧を出したり、全体の帯域バランスを整えたりなど、限られたことしかできません。ミックスで楽曲の全ての問題を解決しようとすると無理が出てきます。

 

ミックスの前段階(素材選びや編曲)が大事です。

 

過剰なアレンジや楽器それぞれの音域を守らない編曲をすると帯域が被ってしまいます。ボーカルが歌っている時に同じ帯域でストリングスが鳴っているとか、リフの帯域が被っているとか。

 

裏メロはボーカルと帯域が被らないように音域をズラして演奏する必要があります。打ち込みの場合、それぞれの楽器の音域を無視してしまうことがあります。ボーカル、ベース、バッキング、それぞれで鳴らせる音域があるので、それを守ってアレンジします。それをすると変な被りは生まれません。

 

ミックスでうまくいかないことが続く場合、実は同じ素材で躓いていたというケースがあります。コンプでうまくいかない、EQでうまくいかない、バランス調整でうまくいかない、何をやってもダメだという時、実は全部同じ素材が絡んでいたというケースです。うまくいかない時は、ミックスでどうにかしようとするのではなく、前の段階に戻って、素材選びやレコーディング(機材選び)やアレンジからやり直す方が近道だったりします。

 

前工程の人が無茶なアレンジをして、エンジニアが頭抱えるなんてことがあるのです。

 

ミックスのやり方、手順

大まかには以下の流れ(手順)です。

 

  1. トラックに名前と色を付ける
  2. 全体の音量バランスを整える(どういったミックスにするのかこの段階で決めておく)
  3. 各トラックの音作りをする
  4. もう一度全体のバランスを整える(微調整をする)
  5. 最初から音を流してみて音割れしていないことを確認する
  6. マスタートラックにマキシマイザーをかけて音圧を出す
  7. 書き出す

 

作業をする前にそれぞれのトラックに名前と色付けをしておくとわかりやすいです。

 

全体の音量バランスを整える

音作りする前に全体の音量バランスを整えます。この段階でどういったミックスをするのか決定しておきます。方向性ですが、大まかにですが「ボーカルとバッキングメイン」と「ドラム(リズム)メイン」とがあると思います。

 

ボーカルとバッキングメインでは、まずボーカルとバッキングから音量調整します。バッキングがボーカルより少し大きいくらいにします。ここで弾き語りの音量バランスにします。

 

それを軸にして、後はドラムとベースを添えるだけです。ボーカルとバッキングが前に出るようにミックスします。例えば課題曲キラキラ星(リードシンセ、アコースティックギター、ドラム、ベース)以下のような音量バランスとなります。

 

こういったドラムが小さめのミックスですと、最終工程としてマキシマイザーをかける時にドラムのアタックが引っかからないので、スレッショルドを深くかけることができ、音圧を稼ぎやすくなります。

 

弾き語りだったりバラードモノだったりポップスはこちらのミックスが合うことが多いです。

 

ドラムメインのミックスはドラムの音量調整から始めます。キックが一番大きく、次にスネアがキックより少し小さくくらいにします。タムはスネアと同じくらいか少しだけ小さいくらいです。

 

ハイハットやシンバルなどウワモノはタムより少しだけ小さいくらい、耳が痛くならない程度に、添える感じで調節します。

 

ドラムを作っておいて、そこに楽器を追加していきます。ボーカルはキックより小さくスネアより大きく、キックとスネアの間に挟む感じです。ベースはキックといい具合に絡むようにします。少しだけ小さいくらい。バッキングはどのくらい楽曲の存在感を出したいかで決めます。最後に全体の微調整して完了させます。以下のような音量調整となります。

 

ドラムメインのミックスはロックやEDMやポップスに合うと思います。ドラムが主体になることでリズムを感じやすくノリやすい楽曲となります。

 

このミックス方法では、ドラムにもよるのですが、マキシマイザーをかける時にドラムのアタックが引っかかるので、浅いスレッショルドでもすぐにピークがきてしまいます。ドラムの音量が大きいと音圧は出にくいです。その点は注意が必要です。

 

音量調整のコツは「VUメーターを使うこと」と、「リファレンスを用意すること」です。

 

VUメーターを使ってミックスをする

VUメーターは人がスピーカーで聞いている音量感に近いものを数値化してくれます。デフォルトで表示されるサンプルピークメーター、これは単に音の最大値(ピーク)が表示されるだけですが、VUメーターは平均値を表示してくれます。ミックス作業をする上で大変重宝します。

 

VUメーターはDAWに付属されていたり、フリープラグインとしてインストールできたりします。

 

ミックスをはじめる前に、VUメーターで全てのパートの音量を横並び(均一)にしておくとミックスしやすいです。

 

VUメーターでミックスをする

 

上の画像はwavesのですが、使い方は簡単で、HEADROOMでdBにするか基準を作ります。私はよく-18dBにしていますが、基準を作ると、0の位置がその決めた基準となります。

 

それを設定したら、それぞれソロで再生してメーターを0に合わせていきます。全てのパートを-18dBにしたら、VUメーターをインサートから外して、あとは自分の耳でミックスします。

 

全てのパートを一旦VUメーターで横並びにすることで、極端に音量が大きいまたは小さいというパートが生まれにくくなり、失敗を防げます。

 

VUメーターと同じものにRMSメーターがあります。protoolsでは標準でいくつかメーターの種類を選べます。RMSメーターに切り替えることで、簡単に人と同じ聴覚上での音量が数値化され、スピーディーにバランスを整えることができます。

 

リファレンスも有効です。方向性に合うリファレンス(見本曲)を用意して、それをDAW上にインポートします。それをミュートしたりソロで流したりして、聞き比べながらミックスをします。

 

個々で音作りをする

音作りは適材適所行います。音作りには「コンプレッサー」「EQ(イコライザー)」「サチュレーション」「ディレイ」「リバーブ」「ディエッサー(マルチバンドコンプ)」などがあります。

 

コンプレッサーはスレッショルド値を超えた音を圧縮して音を均等にするエフェクトです。コンプを使わないと音圧が出ないので、ほぼ全てのトラックにかけます。

 

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EQ(イコライザー)は周波数を指定してその部分(帯域)の音量をブースト又はカットできるエフェクトです。EQについても、例えばスネアの4kHzあたりをついてアタック感を出したい、ボーカルの7kHzをついて存在感を出したいなど、特別こういった音作りがしたいという気持ちがあるならインサートしてもよいですが、ナチュラルなまま使いたい場合はEQは不要です。

 

ディレイやリバーブなど空間系エフェクトはもし空間演出がしたい場合は追加します。当然ですが、リアルな響きが追加されるわけではなく、デジタルな響きがシミュレーションされて追加されるだけですので、そういった演出をしたい場合に使います。

 

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ディレイはやまびこ効果で原音を何msか遅らせて鳴らすエフェクトで、リバーブは空間の響きをシミュレートして鳴らすエフェクトになります。

 

ディエッサー(マルチバンドコンプ)は主にボーカルで使われます。必須ではありませんが、歯擦音が気になる場合に使用します。コンプレッサーは帯域の頂点だけが圧縮されるのですが、耳が痛くなる帯域(4〜15kHz)がタッチされることはありません。

 

ボーカルは「させすせそ」と発音すると、その帯域が暴れることがあります。これが歯擦音(しさつおん)です。ディエッサーは4〜15kHzのみピンポイントでコンプレッサーをかけて音の暴れを抑えます。こうすることで聞きやすい音になります。

 

ちなみにマルチバンドコンプはディエッサーと同じ働きとなります。特定の周波数を指定して、そこだけコンプレッサー(圧縮させる)をかけるものです。用途としては、前述したボーカルに使うことが殆どですが、エレキギターで耳が痛い音が含まれているとか、そういった時にその痛い帯域を探ってそこだけコンプレッションします。使用頻度は多くないですが、たまに必要になります。

 

定位(パンニング)について

ミックスとPAN
パンは上記の画像(protools)のつまみが各トラックについていて、定位を動かすことができます。protoolsならステレオ音源にパンが2つついていて、例えばL100とR80にしたら若干L(左)に音源が寄って鳴ることになります。パンが1つしかついていないDAWもあります。

 

基本は中心(センター)で鳴らします。センターで鳴らさないと音圧を感じられないからです。ボーカルベースキックスネアは中心に置きます。

 

バッキングが1つだけなら中心でよいですが(被りが気になる場合は少しだけLに動かして避けてもよいです)バッキング2つある場合はLとRで振るようにします。あまり極端にLRで振ると中心がスカスカと空白部分が出来てしまうので、パンは少しでよいです。

 

ハイハットやシンバルやタムやウワモノも中心でよいのですが、マスキング(帯域被り)が気になる場合はLRどちらかで振るようにします。ドラムはドラムセットをイメージして振るとよりリアルになります。

 

もう一度ミックスする(音割れしていないか確認する)

個々の音作りが完了したら、全体をミックスしなおします(微調整も兼ねて)。

 

例えば、コンプレッサーをかけたら音量が少し小さくなりますし、サチュレーションをかけたら少し音が大きくなります。それぞれのプラグインでメイクアップゲインがついていてその都度音量の補正ができるのですが、ついていないケースもあります。

 

auxトラックを立ち上げてセンドリターンでエフェクトを追加したら、その分だけ音量は大きくなり初期のバランスが少し崩れます。なので、この段階でもう一度ミックスし直します。

 

注意点として、この段階でマスターメーターがクリップ(音割れ)していないか最初から再生してみて確認します。音割れしているとメーターが赤く光ります。ここで音割れすると、その音割れした音源をマキシマイザーかけることになるので、仕上がりも当然音割れしたものになります。

 

マキシマイザーをかけて音圧を上げる

マスタートラックの最終段(一番下)にマキシマイザー(またはリミッター)をかけて音圧を出します。マキシマイザーとリミッターは同じですが、より音圧を上げることに特化したものがマキシマイザーです。

 

マキシマイザーをかけると指定した数値以上の音は一切出なくなるので、スレッショルドを挙げた分だけ音が前に出てきます。

 

アウトシーリングを-0.3dBに指定して(マスターを0にすると機器によっては音割れしていると認識される可能性があるため、ピークを0未満にすることで予防します)、ゲインリダクション(ATTEN)が-4〜5dBくらいになるまでスレッショルドを上げます。すると楽曲全体で音圧が出ます。

 

その他の設定はプリセットを選ぶ形式になっていたり、リリースキャラクターを選べるようになっていたりとプラグインによって様々です。

 

「マキシマイザー」の効果的な使い方

 

書き出す

それぞれDAWによって違うのですが、protoolsの場合は編集ウインドウでスタートとエンドの範囲指定をして、「ファイル→バウンス」を選択。

 

ファイルの形式はCD音源がWAV、16bit、44.1kHzですので、それを選んでおけば問題ありません。もし人にファイルを渡す場合は形式を事前に聞いておくとよいです。

 

初心者の方が良い結果を出すには?

簡単な方法としては、ミックスについては各トラックにコンプレッサーをかけて(プラグインは付属のものでOK)、それぞれ音量調節をします。コンプレッサーと音量バランスを整えて、後はマスタートラックにオゾン10をインサートして、AIに任せてマスタリングしてもらいます。結果を元に自分の耳で確認しながら微調整します。

 

これが簡単で結果がよいです。自分だけでミックスマスタリングしていくと、行き着くのが「プロの音にならない」という悩みです。家で自分の考えだけで料理していて、どうやっても店の味にならないという現象に似ていると思います。

 

それは、やはり、メジャーシーンには隠し味的なツールが使われているからです。トップエンジニアの裏側が見れる海外の有料サイトに登録していたことがあるのですが、使うツール、その使い方、斜め上を行く内容に愕然としてしまいました。

 

オゾンは隠し味的な味付けがマニュアル化されており、さらに楽曲のバランスまで整えて提供してくれます。形になるのです。

 

他には、cubase付属のプラグインも大変優秀です。卓のような設定になっていて、コンプ、EQ、サチュレーションとかけていって、マスタートラックにマキシマイザーをかけると、これもよい出来になります。

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