エキサイター/エンハンサーとは?どんな効果があるのか?
エキサイター、エンハンサーは原音に倍音成分を加えて(又は倍音をコントロールして)音を煌びやかにしたり音を太くしたりするエフェクトです。
エキサイターとエンハンサーの違いですが、1970年代にAphex社から発売された商品名(オーラル・エキサイター)がそのまま世間に浸透したのがエキサイターです。エンハンサーは広義の意味合いを持ちます。両方とも同じ意味です。
エキサイターとサチュレーションとの違いについて
エキサイターを考える上でサチュレーションと比較するとわかりやすいかと思います。この2つは別物です。
サチュレーションはアナログ機器にピーク付近まで音を入れることで音を歪ませて音を華やかにするエフェクトです。アナログは0に近づくほどナチュラルに歪んで倍音が発生するという特性があり、それを活かしています。
デメリットも存在し、音の帯域の頂点(ギターなら400Hz付近)が歪むのと引き換えに削れていきます。中音域が削れていくことで音が薄くなるという欠点があります。
エキサイターの場合はそういったことは起きません。単純に倍音を「加えている」だけなので、音を薄くすることなく、華やかさだけを加えられます。後で紹介しますが、このエキサイターの特性を活かして様々なプラグインが発売されています。低音を強化したり、全体の明るさを調節したり、ロック調にできたりなどです。
ただ、使いすぎには注意が必要です。効果が高い分、多用すると倍音超過になります。トラック単体にかけてワンポイントで使うのが無難だと思います。
実機やギターエフェクトのあれこれ
昔はエンハイサーのアウトボード(実機)が販売されていましたが、今は販売終了になっています。エンハンサーの元祖APHEX ( アフェックス ) / EXCITER。
アフェックスのエキサイター
画像引用:https://www.aphex.com/products/exciter/
エレキギターのエキサイターエフェクトも昔はBOSSの「EH-2 Enhancer」が販売されていましたが、今は生産終了しています。現在販売されているエキサイターエフェクトはVOCU ( ヴォーキュ ) の「Magic Tone Room」だけです。
Magic Tone Room
画像引用:http://www.vocu.jp/products/MTR/MTR.htm
ベースのエキサイターエフェクトはBOSSの「LMB-3 Limiter/Enhancer」が今も販売されています。
LMB-3 Limiter/Enhancer
画像引用:https://www.boss.info/jp/products/lmb-3/
エキサイターの実機やエフェクトは数が少ないのが現状です。プラグインでしたら数が豊富です。プラグインなら様々なメーカーから用意されています。
エキサイター/エンハイサープラグイン8選
Maxx Bass/waves
ベースやキック専用の低音強化プラグインです。指定した周波数にハーモニクス(倍音)を加えられます。次に紹介するR-Baseとの違いですが、こちらの方がナチュラルなかかりで、倍音を足してもインサート前とで音量に差が出にくいので扱いやすい面があります。
使い方はFreqで周波数を指定します。70〜90Hzの範囲で使われることが多いかと思います。Maxx Bassというスライダーを上げていくと倍音が足されていきます。High Passがローカットのことでスロープの形を選べます。Decayがハイカットのことです。スロープを数値で指定できます。倍音のかかる範囲を決めて、その範囲以外をカットします。waves goldバンドルに含まれているので持っている方は多いかと思います。
Renaissance Bass/waves
R-BaseはMaxxBass/wavesの進化版です。アルゴリズムの詳細については発表されていませんが、どうやら、低域の倍音を持ち上げることで低域を強化するという仕組みのようです。主にベースやキックに使いますが、バッキング(ピアノやギター)にも使えます。
低域を際立たせようとしたらイコライザーで低域をブーストすればよいと考えますが、それでは音量が上がるだけで低域は強化されず、かえって全体の帯域バランスが崩れてしまいます。そうではなく、例えば80を指定してスライダーを上げると、その倍音(第二倍音の160Hzや第三倍音の240Hzなど)が持ち上がり、存在感が出るという仕組みです。
使い方はFreqで周波数を指定してスライダーで持ち上げるだけです。音量が上がった分Gainで下げて調節します。
Vitamin Sonic Enhancer/waves
マルチバンド形式のエンハンサーです。最大で5バンドで使用可能です。低域だけでなく中音域から高域まで対応しているので、色んな楽器で使用可能です。バッキングに使ったりドラムに使ったりが多いかと思います。
使い方は周波数を指定してスライダーで持ち上げるだけです。最後にアウトプットでインサートする前とで音量差が出ないようにゲインを微調整します。
上の3つ(Maxx BassとR-BaseとVitamin)はwavesのHorizonバンドルに含まれます。沢山のプラグインが含まれているので、Horizonは持っているけどノーマークで使ってこなかったという方もいらっしゃるかもしれません。
Oxford Limiter/Sonnox
マスタートラックに挿すリミッターですが、エンハンサー機能がついています。おそらくリミッターにエンハンサーがついているのはSonnoxだけかと思います。このプラグイン自体が素材を損なわずにエフェクトをかけられるのですが、そこにエンハンサーがついているのは大変重宝します。
通常はマスタートラックに色々なプラグインをかけて質感を出していきますが、ENHANCEのスライダーを持ち上げるだけで楽曲全体に存在感が出るのはとても楽です。10%〜20%程度軽くかけておくだけで印象が変わります。
Aphex Vintage Aural Exciter/waves
70年代に活躍したAPHEX ( アフェックス )真空管モデルを再現したエキサイタープラグインです。
かかり方がアナログ寄りで、VUメーターで表示されますが、0に近づくほど倍音がより強力に付加され、音に輝きが生まれます。使い方はMODEでかかり方を選んで、INPUTでどのくらいエキサイターを加えるのがVUメーターを見ながら調節します。OUTPUTOで微調整して完了です。
Cobalt Saphira/waves
wavesの新しいプラグインです。倍音のかかり方を細かく選んでコントロールできるエンハンサーです。偶数倍音(Edge)と奇数倍音(Warmth)の2つに分かれていて、どちらか選んで倍音を加えられます。
Edgeが冷たい印象になり、Warmthが暖かい印象になります。倍音構成が下の項目でA〜Gまで7通り用意されており、そこから選べます。例えば、偶数倍音のAを選ぶとか、奇数倍音のGを選ぶとかです。数多くのパターンで力業で楽曲の印象を変えられます。
Infected Mushroom Pusher/waves
3バンド(Freqは固定)のエンハンサープラグインです。Vitaminとの違いですが、個人的な感想では、Vitaminはオールマイティに使える印象で、こちらはEDMに合いそうな印象がありました。
カッコよくてノブを回すだけでエモい楽曲になります。LOW(低域)、BODY(中域)、HIGH(高域)の3つに分かれていて、それぞれノブを回して倍音をコントロールします。
Ozone10 Exciter/izotope
シングルバンドから最大4バンド(マルチバンド)まで対応しているエキサイターです。マスタリング向けですがトラック単体にもかけられます。種類が7種類と豊富です。アナログ、レトロ、テープ、チューブ、ワーム、トライオード真空管から選べます。