イコライザーの使い方

EQなしの音作りでも特別問題はないです

基本的なバンド構成(ボーカル、バッキング、ベース、ドラム)ですと、全体の音量調整ができていれば、音が被ることは殆どありません。音域でいうと、ベースがE1〜A3、ボーカルがA3〜A5あたり、バッキングがA2から上をコードで奏でることになります。

 

ベースとボーカルは持続音なのですが、両者は帯域が違うので被りませんし、ボーカルとバッキングは中域が多少被るのですが、ボーカルは持続音、バッキングは瞬発的な音なので、被っても一瞬だけです。しかも音程は動きますので、それも被りづらい要因です。

 

ドラムは、キックがベースと、スネアがボーカルと多少被りやすいのですが、これも、ドラムは瞬発的な音ですので、殆ど被らないようになっています。ウワモノはどの楽器とも被りません。

 

このように普通のバンド構成で曲を作っていたら、瞬間的には被ることがあるのですが、大枠収まるようになっています。EQは絶対に使わなければいけないものなんだということはありません。必要なら使いますし不要なら使いません。これは弾き語りやバラードでのピアノの構成でも同じです。

 

ただ、被ってしまうケースもあります。それは編曲で楽器を追加したケースです。

 

例えば、サビでストリングス(持続音)を入れて、それがボーカルと帯域が被っているケースです。これはアウトですね。ストリングスはボーカルと被らないように、帯域をズラして入れるのがベストです。ギターリフを入れる場合でも、ボーカルと被らないように、帯域をズラす必要があります。裏メロもリフも重要なテクニックですのでどんどん楽曲に入れていきたいのですが、ボーカルとの帯域被りだけは気を付ける必要があります。

 

編曲を気を付ける方が大事だったりします。

 

EQのパラメーターについて

EQのパラメーターですが、Freq(フリーケンシー)で周波数を指定して、Gain(ゲイン)でブーストするのか、カット(減衰)するのか決めます。
EQの影響の範囲を決めるのがQです。数値を低くすれば広範囲でEQがかかり、数値を高くすればQが狭くなって、限られた範囲でEQがかかることになります。

 

フィルタータイプは主に3つあります。ピーキングは指定した周波数を頂点として山型にブーストまたは、谷型にカットされます。ハイパスフィルターはローカットのことで、これを使うとローが強くカット(音量が減る)されます。反対はローパスフィルターです。フェルビングは指定した周波数の上または下をまとめてブーストまたはカットされます。以下の通りです。

 

ピーキングイコライザーの使い方3つのポイント

 

シェルビングイコライザーの使い方3つのポイント

 

ハイパスフィルターとローパスフィルターイコライザーの使い方3つのポイント

 

EQを使う時はどんな時?

素材の下処理で使う時と積極的な音作りで使う時があります。

 

素材の下処理で使うケース

打ち込み音源でしたら完成された状態で提供されるので、わざわざ下処理をする必要はないのですが、自分でレコーディングした素材の場合、EQで下処理が必要になるケースがあります。

 

例えば低域が膨らみすぎた場合や、マイキングによって極端な音になった場合などです。マイクは近接効果で低域が膨らみますし、離すと全体像をとれてバランスよく取れます(離しすぎると音の芯がなくなることがあります)。位置関係で大きく変化するのです。それをEQで補正するというケースです。低域が膨らみすぎた場合は緩やかにローカットを入れるとよいです。

 

ポイントは問題となっている帯域を特定することです。

 

補正のやり方は、まず低域、中域、高域のどこをイコライジングしたいのか決めます。

 

イコライザーの使い方3つのポイント

 

中域が1kHzで、低域がその1/10の100Hzです。高域が10倍の10kHzです。それを決めたら、イコライザーのタイプをピーキングにして、ゲインを3〜5dBほど上げます。Qを狭くして、Freqを動かして、補正ポイントを探していきます。補正ポイントが見つかったらブーストもしくは減衰量を調整して、あとはQの広さも決めて、補正を完了させます。

 

下処理はEQだけでなく、ディエッサーやマルチバンドコンプを用いることもあります。これも同じで、問題を起こしている帯域を特定し、そこにだけコンプレッションさせます。

 

少し話が変わりますが、使っている機材で、扱いやすい素材になるかならないか決まることが多いです。下処理が必要ないくらいの素材にするには、多くの人が使っているメジャーな機材を使うことが大事です。自分でミックス作業までしてはじめて、機材の良し悪しがわかります。

 

積極的な音作りでEQを使う

例えば暗めのピアノを明るい音色にしたい時やボーカルのヌケをよくしたい時など、「こうした音にしたい」という場合には積極的な音作りをします。

 

ただ、これについては、それぞれ、例えばベースだったらこことここの帯域をブーストしたらこういう音になるとか、ボーカルは3箇所いじったらヌケがよくなるとか、知識が必要です。それぞれの楽器をEQでいじりながら音の変化を聞いて理解する部分が大きいです。

 

ここに経験の差が出ます。ベテランエンジニアの方は私には理解できないような技を沢山持っています。簡単にはいかないです。

 

EQにはプリセットが用意されているので、それを活用したり、EQに関する書籍を読んでみたり、自分でEQをいじってみたり、直接聞いてみたりなどで知識を増やします。

 

エフェクトをかける順番について

エフェクトをかける順番は「コンプレッサー→EQ」が好ましいです。コンプをかけると帯域の頂点が削れます。EQをかけてからコンプをかけるとせっかく音作りしたのに、帯域の頂点を削ってしまいます。

 

コンプをかけた後でEQをかけると音作りがそのまま反映されます。

 

ただし、マスタートラックにマキシマイザーをかけることになり、マキシマイザーはレシオ無限大のコンプなので、どの道音は潰れます。エフェクトをかける順番に大きな意味はないのですが、「コンプレッサー→EQ」にしておいた方が気持ちいい方向になります。

 

周波数の全体像と音作りのポイント

■周波数の全体像

・0〜110Hz:体に伝わってくる振動、リズム、音の重石となる   ・111〜330Hz:基音(ベース音)  ・440〜830Hz:基準周波数、人の耳に一番届く   ・1〜11k:倍音による質感   ・11〜20k:空気感

 

音作りで大事なのは、バッキングとボーカルだけでしっかりと聞けるサウンドにすることです。もしバッキングがないパートではボーカルだけで聞けるサウンドにします。ただ、これは余計なことをしなければ自然とそういったサウンドになることが殆どです。

 

バッキングとボーカルは440Hz周辺(もしくはそれより少し下)が最も鳴ります。コンプレッサーで潰しすぎた場合、帯域の頂点であるここが大きく削れるので、薄い音になってしまいます。コンプを-3dB以内にするけど、かけすぎなければ気になるほど薄いサウンドにはなりません。かけすぎ注意ですね。もしかけすぎた場合は、その削れた部分をアナライザーで確認してEQで補正することが好ましいです。

 

その上の周波数は倍音の帯域となります。2.7kあたりがエッジの効いた音、5.4kあたりがキンキンとした高音、8.7kあたりが楽曲の抜けとなります。2.7kと5.4kはここは殆どのマイクでブーストされている領域で、大体が良い質感でとれています。なので特別いじる必要はありません。もし、もっとボーカルを際立たせたい場合はこの2つをブーストします。

 

問題は92Hzと8.7kです。92Hzは振動を感じる帯域で、音の重石となる部分です。ここが薄いとペラペラとしたすぐに風に飛ばされるような宙に浮いたサウンドになります。音程を奏でる帯域とは完全に外れていますが、かっこいいサウンドにする場合、低音と高音であるこの2つがバランスよく出ている必要があります。

 

ただ、これも特別EQでいじらなければ十分に出ているケースが殆どですが、ローカットをしてしまうと、92Hzがゴッソリとカットされますから、一気に聞けないサウンドになります。勿論、近接効果によって92Hz周辺が膨らんで録音されるケースもあるのですが、その場合は、ローカットではなく、ローシェルビングや減衰でその膨らんだ分だけカットするとよいです。

 

素材によってはこの2つが十分に出ていないケースもあります。例えばバッキングがなんか抜けてこないとか、なんか重さが足りない物足りないという時に補強すると良いです。素材を見極めて、必要ならEQをかけると良いでしょう。

 

ボーカルだけで聞ける、もしくはバッキングとボーカルだけで聞けるという土台ができたら、あとは自由に音作りができます。

 

ドラムは噪音楽器で特定の音程をもちませんから、極端な音作りをしても破綻しないケースが多いです。ベースやキックをローカットするということはないでしょうが、スネアやタムはナチュラルにローカットしても問題ありません。よくある音作りがキックを62Hz部分上げて迫力出すとか、キックスネアタムの500Hz部分を少しだけカットするとか(ここは不要な部分です)、1〜11kの質感の部分を大胆にブーストするなど。

 

ドラムの音作りについてはAddictive Drums 2のプリセットを参考にするとよいです。プリセットが豊富に用意されていて、それぞれがかなりバラエティ豊かに音作りされています.

 

パラレルコンプとEQによる重低音サウンドの音作りしていたり、ローカット多用の重心の高い音作りをしていたり、HOとRoomだけで音作りしていたり、明るいドラムになっていたり、それを見るだけで参考になる部分は大きいです。

 

ベースに関しては多くのケースでカットの方向になると思います。キックとベースは帯域が少し被ります。そこを少しだけカットするとベースが引っ込みます。

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