そもそも不協和音とは?
不協和音とは音楽の専門用語ですので、「楽典―理論と実習」を参考に前半解説し、後半で私の見解も交えて実践的な話をしていこうと思います。
人の耳は、2つの音の響き(振動数)が簡単な比率になっているほど、協和していると感じ、複雑な比率になっているほど不協和に感じる性質を持っています。最も協和するのが完全1度(振動数の比が1:1)と完全8度(1:2)です。ユニゾンやオクターブが重なり合った音(協和している)なのはわかると思います。
次に協和するのが完全5度(2:3)と完全4度(3:4)です。
その次に協和するのが長3度(4:5)と短3度(5:6)と長6度(3:5)と短6度(5:8)です。これら4つのことを不完全協和音程と呼びます。ハモリとして使われる音程ですね。いい塩梅で協和するため3度ハモリや6度ハモリはよく使われる手法です。上記以外は全て不協和音となります。まとめると以下の通りとなります。
※引用:楽典―理論と実習
不協和音は使ってはいけないのか?
そんなことは決してありません。というより、不協和音を排除して現代音楽は作れないといっても過言ではないくらい、不協和音は身近なものですし、細かく不協和音をカウントしていくこと自体ナンセンスです。
たとえば、コードにおける不協和音ですが、協和関係にあるコードはメジャーコード(R・M3・5)とマイナーコード(R・m3・P5)とaug(1・M3・♯5)の3つだけです。それ以外のコード進行は不協和音が含まれています。
例えば、セブンスコード(R・M3・5・m7)には減5度(トライトーン)が含まれていますし、メジャーセブンスコード(R・m3・P5・M7)には長7度の不協和音が含まれ、マイナーセブンスコード(R・m3・P5・m7)には短7度の不協和音が含まれます。sus4には長2度の不協和音が含まれます。dim(ディミニッシュ)コードにはトライトーンが2つも含まれ、より緊張感のある音になっています。
不協和音が含まれないコードのほうが珍しいくらいで、どのコードにも協和関係の中に不協和音が含まれ、その複雑な響きが音楽的な広がりを与えています。セブンスにはトライトーンが含まれるために緊張感のあるトーンになり、メジャーセブンスコードには長7度の音が入っているために明るさの中にどこかお洒落な響きがあります(解釈は人それぞれですが)。
どのコードにどのような不協和音が含まれているのかは一切覚える必要はありませんし、実際に弾いてみて、聞いて感じ取った感覚で作曲活動をしていけばよいです。制作活動は論理的に説明できないことの連続ですので。
コードとメロディの関係で不協和音が生まれることもあります。メロディは常に動いていますからコードトーン(コードの構成音)に収まることもあれば、ノンコードトーンに位置することもあります。
その時は何かしらの不協和音が発生している可能性が高いです。テンションになったり四和音の関係になったり、様々な響きとなります。それも音楽の醍醐味です。不協和音は制作活動をしていたら自然と生まれるものなので。意識することで創造の幅が狭くなることの方がよくないかもしれません。
アボイドノートと不協和音について
気を付けるべき音としてアボイドノート(回避音)があります。これはコード構成音の半音上の音のことを指します。不協和音とはまた別の概念ですので、簡単に解説します。現代の音楽の殆どが機能和音となっています。和音にはそれぞれ機能があり、それを組み立てることで成り立っています。
例えば4小節でCメジャースケールで、「F-G-Am-C」というコードが2回繰り返されて8小節分あったとします。これはサブドミナント、ドミナント、トニック(代理コード)、トニック、とい4小節分の構成が2回繰り返される形となっています。これらコード構成音の半音上にメロディが来ると、音がぶつかって、コードの機能を奪ってしまいます。
コード構成音に対して短2度(半音上)の位置にあり、音が半音でぶつかりますので、当たっている感覚、コードがぶつかってもっていかれる感覚がします。ただし短いトーンでしたら一瞬の音なので気になりません。
長いトーン(ロングトーン)のアボイドノートは最終的に自分の耳で判断することになります。
和音の機能(音楽の骨組み)を奪ってしまうので長いトーンのアボイドノートは避けた方が良いというのが通説です。ただ、現実では、音楽に決まりはなく、長いトーンのアボイドノートが含まれるヒット曲も存在します。
結局不協和音は気を付けないとダメなの?
上記は私が実際に使っているものでなぐりがきで申し訳ありません。◎が最も協和する、〇がほどほどに協和する、△が不協和音、×がアボイドとトライトーンです。0〜12の数字は半音何個分の距離かを示しています。減5度や長7度と言われてもなかなかイメージつきにくいですが、半音何個分離れているかで把握するとわかりやすくなります。
主にハモリを作るのに重宝しています。主旋律に対して半音何個分の距離かを見ます。完全4度や完全5度は協和しすぎるためハモりに向いていません。
基本は3度や6度で作り、3度で作ってアボイドする時は完全4度や長2度に逃げることもできます(よっぽどのことでない限りアボイドでも逃げませんが)。
※参考文献「楽典―理論と実習」石桁 真礼生 (著), 末吉 保雄 (著), 丸田 昭三 (著), 飯田 隆 (著), 金光 威和雄 (著), 飯沼 信義 (著)