マキシマイザーとは?役割は?
マキシマイザーの動作原理はコンプレッサーに似ています。コンプレッサーはスレッショルド値を超えた音に対して指定した比率に従って(例えば4:1など)音が圧縮されます。
マキシマイザーの場合は比率が「∞:1」になっており、指定した以上の音は出ないようになっています。ミックスの最終作業としてマスターにかければ、瞬発的な音が枠から一切出なくなるので、音圧を上げることが可能です。波形でみると以下の通りです。
●マキシマイザーをかける前
●マキシマイザーをかけた後
マキシマイザーの使い方について
マキシマイザーをかける前に全体の音量調整を済ませておきます。マキシマイザーをかける前に音源がクリップ(音割れ)していないか確認します。全体を最初から流してみて、マスターメーターが赤くならないかチェックします。
この段階で音割すると、その音割れした音源に対してマキシマイザーをかけることになるので、当然仕上がりも音割れしたものになります。それを確認してから、マスタートラックの最終段(一番下)にマキシマイザーをインサートします。
DTMのマキシマイザーの使い方
重要なパラメーターは以下の通りです。
- Threshold(スレッショルド)
- Out Ceiling(アウトシーリング)
- Release(リリース)
- ATTEN(ゲインリダクション)
アウトシーリングでマキシマイザー適用後の最終的な出力を決めます。0にすると機器によっては音割れしていると読み込まれることが稀にあります。それを回避するためにアウトシーリングを「-0.3〜0.6dB」に設定します。ピークを0dB未満にしておくわけです。
スレッショルドを上げていくとコンプレッションがかかって音圧が出てきます。どの程度圧縮されたのかはATTENまたはゲインリダクションとしてリアルタイムで「−〇dB」と表示されます。
リリースはスレッショルド値を下回ってからどのくらいでコンプレッサーを切るのかという数値です。msで表示され、例えば200msに設定すると、スレッショルド値を下回ってから200ms後にコンプが切れるということです。ここで、すぐに切るのか、余興を残すのか決められます。
マキシマイザーの使い方ですが、簡単なのは、アウトシーリングを−0.3dBに設定して、その他の設定はプリセットから選んで、後はゲインリダクションが-4〜5dB程度になるまでスレッショルド値を下げます。こうすることで自然な範囲で音圧を出すことができます。
マキシマイザーは奥が深いので、凝ろうと思えば、かなり凝った設定ができます。難しい面があるのでプリセットから選んでおくのが無難です。
次で解説しますが、パラメーターで大事なのは、アウトシーリングとゲインリダクションとリリースです。
どの程度かければいい?
どういった仕上がりにしたいのかによって変わってきます。全体のダイナミクスを残して自然な仕上がりにしたい場合は、ゲインリダクションを-2〜4dBくらいになるようにスレッショルドをかけるとよいです。
ガッツリ音圧を出したい場合はゲインリダクション-5dB以上になるようにスレッショルドを上げていきます。コンプレッションを深くすれば、ドラムのアタックが切れていき、持続音のボーカルやベースなどが前に出てきます。聞いていて迫力があるサウンドになります。
注意点としてはコンプレッションを深くするとドラムのアタック部分に歪みが発生します。これをどこまで許容できるかです。
歪みをできるだけ回避するのにリリースの使い方が大事になります。リリースを最速(1ms)にすると、コンプレッションがすぐに解除されるので、音が不自然になったり歪みやすくなります(スレッショルド値を超えた部分のみ圧縮されて、そのラインを下回ったらすぐにコンプレッションが切れるので、全体で音が平坦になってしまいます)。
リリースを伸ばしていくと、余興ができるので、音が自然になり歪みにくくなります。リリースは自然な範囲で伸ばすことが好ましいです。リリースは早くても180ms、標準で400msくらいです。この範囲で、自分の耳で確認して調節するとよいです。ただ、殆どのプラグインで、プリセットから選べるようになっていたり、リリースキャラクターが選べるようになっていたりするので、自分で細かく設定する機会はそんなにありません。
CD化する場合は後者(音圧を出すやり方)の方が有利になることが多いと思います。他のCD音源と比較して音が大きく感じるので。やはり音が大きい方が好まれます。
インターネットに投稿する場合
最近では動画サイトに投稿して聴いてもらう機会が増えました。どの動画サイトにもラウドネスノーマライゼーションが導入されています。公式で明確な数値は発表されていませんが、通説では以下の通りです。
- youtube -14LKFS/LUFS
- ニコニコ動画 -15LKFS/LUFS
- spotify -14LKFS/LUFS
例えば、youtubeの場合、-14LUFSの音量を超えた音源は強制的に指定された数値まで音量が下げられます。元々小さな音量の音源はそのままです。
大体ですが、普通にミックスしてマキシマイザーをかけずに書き出した音源でも、-17LUFSは出ます。マキシマイザーをかけると、ナチュラルにかけても-13LUFSくらい、ガッツリかけると-9LUFSは出ます。
この2つはyoutubeではノーマライゼーションによって強制的にどちらも-14LKFSになります(前者が1dB下げられて、後者は5dB下げられる)。ネット投稿ではマキシマイザーを深くかけようが浅くかけようが音圧(音量)に差は殆ど出ません。小さい音はそのままですが、大きな音は一線を超えると下げられるので、相対的に差がでにくいようになっています。
皆さんも、普段動画サイトを見ていて(見ていない方もいらっしゃると思いますが)、動画それぞれで大きな音量差は感じないはずです。iPhoneで弾き語りをとったようなカジュアルな動画でも、ミックス済みの動画でも、大まかには音量差は感じません。
要はネット投稿では細かなことは気にしなくてもよいということですね音が小さければサイト側が何とかやってくれます。
マキシマイザーをかけても音圧が上がらないケース
マキシマイザーをかける前の素材にコンプレッサーをかけていない場合、音圧を感じにくいです。音圧を出すには、パート1つ1つにコンプをかける必要があります。そうすれば、音圧で悩むことはないと思います。
より音圧を出したい場合、マスタートラック(ミックスした音源)の低域から高域までのバランスが重要です。ただし、これは難しい所で、例えばバンド形式の音源と弾き語りの音源では、使われている楽器が異なるので、マスタートラックには異なる帯域の音の出方となります。
ある程度は、音圧がでないケースでも、許容する必要があります。
一番簡単なのはオゾンを使うことですね。オゾンをマスタートラックにインサートしてAIに任せると、低域から高域までバランスの取れた音源にしてくれます。AIが模範となるバランスで、イコライザーでカーブを描いてくれます。
そもそもバンド形式や弾き語りは、その構成でやったら自然と低域から高域までバランスがとれるようになっているので、いじらないならいじらないでよいのですが、より良い音源にする場合マスタリングが必要になります。
ただ、マスタリングは初心者には難しいです。マスタートラックを聞きながら、110Hz辺りの低域が弱いなとか、中音域が膨らみすぎだなとか、高域が出すぎているとか、その判断が難易度高いです。
初心者の方はオゾンのAIに任せた方がうまくいきやすいです。